通信チェスでは指し手をどのように対局者に伝えるのでしょうか
通信チェスでは、指し手の記号を書いて送信することで、その手を「指した」ことになります。
したがって、はじめに記号の表し方=表記法を覚えることが必要です。
チェスの表記法はいろいろありますが、現在は代数式(algebraic notation、国際式)が世界標準となって使用されています。
代数式は、ポーン以外の駒記号に駒名称の頭文字を用います(ポーンは駒記号なしで表す)。それぞれの国・地方の使用言語により駒の名前は異なり、異なる駒記号で棋書やチェス雑誌が発行されているのです。
JCCA 国内対局での指し手の表記法
JCCAでも標準代数式を指し手の表記法とし、駒記号は英語圏と同じ[KQRBN]と定めています。
みなさん既に代数式表記法にはおなじみのと思います。もしそうでなければ、小野田博一著「チェス——入門から上達まで」有紀書房 1994年 がおすすめです。あなたは表記の練習をする必要がありません。本書を読み(?)進めるうちに自然におぼえられるように、構成にくふうがしてありますから
(同書 p. 32 より)。それに、この本は並の入門書でありません。後々まで楽しめる本だと思います。参照: "チェスの本"のページ
a8 | b8 | c8 | d8 | e8 | f8 | g8 | h8 |
a7 | b7 | c7 | d7 | e7 | f7 | g7 | h7 |
a6 | b6 | c6 | d6 | e6 | f6 | g6 | h6 |
a5 | b5 | c5 | d5 | e5 | f5 | g5 | h5 |
a4 | b4 | c4 | d4 | e4 | f4 | g4 | h4 |
a3 | b3 | c3 | d3 | e3 | f3 | g3 | h3 |
a2 | b2 | c2 | d2 | e2 | f2 | g2 | h2 |
a1 | b1 | c1 | d1 | e1 | f1 | g1 | h1 |
さて、全般的説明は入門書やFIDEのサイトに譲るとして、こごては細かな点をいくつか復習しておきましょう。
ルールにより、取り、チェック、メイト、アンパッサンなどの符号を書かなくても、不可能な手とはならない。また、指し手の連番号を誤記しても、指し手が判読できる場合は、不明瞭な手とはならない。
Eメール対局の場合です。文字はすべて、いわゆる半角文字を使うこと。かな漢字変換機能(IME)をオンにしたままタイプすると全角文字を混ぜてしまうことがありますが厳密にはこれは違反です。対局の記録・管理にはなんらかのソフトを使うのが通常です。外国製のアプリケーションなら全角文字は漢字と同じで読み取れないでしょう。
これもEメール対局の場合です。キャスリングの記号は通常、数字のゼロを使った 0-0、0-0-0 ですが O-O、O-O-O(大文字のオー)も許容されます。ゲーム結果報告書はPGNという形式での提出が義務づけられていますが、PGNは大文字のオーを使うからです。
不明瞭な手?
[FEN: rnbqk2r/pppp1ppp/5n2/4p3/1b2P3/2NP4/PPP2PPP/R1BQKBNR w KQkq - 1 4]
上の局面で「4. Ne2」は不明瞭な手でしょうか?確かに、e2にはNc3とNg1の二つのナイトが利いています。しかしNc3は黒のBb4によってキングにピンされていて動けません。出発点を区別する必要があるのは到着点に複数の同じ種類の駒が動けるときで、利いているときではありません。ですから、この局面での「4. Ne2」は正しい表記です。不明瞭な手ではありません。では、「4. Nge2」と書いたら?もちろん、全く問題ありません。どちらの表記でも、消費日数追加の罰則を受けることはありません。
上の局面で、仮に d2 にポーンあるいはビショップがいたら、そのときは「4. Nge2」か「4. Nce2」かで区別します。このようにファイルだけで出発点を区別できるときはファイル名を使います。ファイルでは区別できずランクで区別する必要があれば、例えば「4. N1e2」とか「4. N3e2」とかのようにします。ファイルだけでもランクだけでも不十分の場合は、もちろん両方書きます、「4. Ng1e2」とか「4. Nc3e2」とかのように。取る記号は出発点と到着点の間に入ります、4. Ngxe2、4. Ng1xe2 etc。
ICCF 国際対局での表記法
18 | 28 | 38 | 48 | 58 | 68 | 78 | 88 |
17 | 27 | 37 | 47 | 57 | 67 | 77 | 87 |
16 | 26 | 36 | 46 | 56 | 66 | 76 | 86 |
15 | 25 | 35 | 45 | 55 | 65 | 75 | 85 |
14 | 24 | 34 | 44 | 54 | 64 | 74 | 84 |
13 | 23 | 33 | 43 | 53 | 63 | 73 | 83 |
12 | 22 | 32 | 42 | 52 | 62 | 72 | 82 |
11 | 21 | 31 | 41 | 51 | 61 | 71 | 81 |
上述のように代数式は使用言語によって駒記号が様々ですから、国際対局では互いに理解できなかったり、誤解したりするかもれません。PGNも代数式の一種で、駒記号はやはり言語により異なります。
書籍では駒記号の代わりに絵文字を使った代数式(figurine algebraic)でこの問題を解決しようとしているものもありますが、通信チェスには不向きなことはいうまでもありません。
かといって、どれか一つの言語を選ぶとなると、意見の一致をみるのが難しいこともあるでしょうし、国際交流のつもりが国際紛争に発展......という恐れがなきにしもあらずです。
そこで、使用言語の異なる人々の間でゲームするときでも困らないよう、国際対局に必須の数字式表記法(numeric notation)が以下のように決められています。
- [a1]を[11]、[h8]を[88]として、駒の出発点と、到着点の4数字を並べます。
- 例、「Ng1-f3」は、[7163]
- キャスリングは、キングの動きで表します。
- 白0-0は[5171]0-0-0は[5131]
- 黒0-0は[5878]0-0-0は[5838]
- アンパサンで取るのもポーンの出発点と到着点で表します。
- dxc6 e.p. は[4536]
- ポーンのプロモーション(昇格)も数字で、5桁目として表します。
- 1=Q, 2=R, 3=B, 4=N
- 例、「Pe7-e8=Q」は[57581]
- ([5758(1)]とカッコの中に入れたり、到着ランクを省略して[5751]と無理矢理4桁にする方式もありますが、標準ではありません)